年々増加する糖尿病性腎症

腎症では末期腎不全におちいって、透析をしなければ生命を維持することができなくなってしまいます。
腎臓は血液が運んできた体内の老廃物をろ過し、尿として排泄する重要な機能をもっているのですが、腎症が進むにつれ、尿をつくる機能が低下し、最後には人工透析をしなくてはならなくなります。
残念ながらわが国では、こうした糖尿病が原因で透析療法を受ける人が、最近どんどん増えてきています。現在透析を受けている人の数は全国で18万人、その4分の1が糖尿病性腎症によるものですが、これを最新の年間新規透析患者数でみると、3万人中1万700人(1998年)と、3分の1以上にも及んでいて、透析導入原因のトップを占めているのです。
しかも、糖尿病で透析を受けている人の、その後の経過は必ずしもよいとはいえません。

 

原因は高血糖

なぜ、糖尿病が腎症をひきおこしてしまうのでしょうか。
腎臓は、糸球体とよばれる細小血管塊が集まった組織で、この糸球体が、左右の腎臓のなかに100万個ずつもあります。この糸球体の一つひとつで、血液中の老廃物がろ過されるしくみになっているのです。
糖尿病性腎症は、糸球体の細小血管が狭くなり十分に老廃物をろ過できないために起こります。その原因となっているのが高血糖です。
このように小さな血管に何らかの障害がおこる病気を細小血管症といいます。糖尿病の3大合併症は、すべて細小血管症によるものです。
網膜にも腎臓同様に小さい血管がたくさん分布しています。高血糖は、この小さな血管の正常なメカニズムを長い時間かけて徐々にかえてゆき、障害を引き起こしていくのです。
腎症の場合、高血圧、肥満、高タンパク、高食塩、それに、社会生活上のストレスなどの増悪因子が加わると、病状の進行に拍車がかかることが知られています。

糖尿病性腎症のメカニズム

腎臓の糸球体では、性状な場合、タンパク質や赤血球や白血球などはろ過せず、水や電解質(ミネラル)、老廃物だけを通過させ尿のもとをつくります。しかし高血糖がつづくと、
この糸球体の血管が硬化し血管が狭くなると同時にろ過作用が低下し、だんだんとタンパク尿が出てくるようになったり、ついには尿が出にくくなって、老廃物が体にたまって尿毒症になります。

早期発見が大切

糖尿病性腎症は自覚症状のないまま、じわじわと進行していきます。尿たんぱく検査で陽性反応が出たり、体にむくみが出るなど自覚症状がおこっときには、かなり腎症が進んだ状態で、
治療も腎症の進行を遅らせることが中心になってしまいます。このためできるだけ早期に腎症を発見する必要があります。
早期の腎症を発見するためには、微量アルブミン尿検査が有効です。この検査は非常に微量のたんぱく(アルブミン)を、
感度のよい方法で尿から見出す新しい検査方法ですが、検査を受ける人にとっては、一般の尿検査の方法と変わりありません。

糖尿病性腎症にかかりやすい人は?

加齢による腎機能の低下は、50歳を過ぎると、性別差が現れることが分かっています。女性のゆるやかな低下に比べて、男性では機能の低下が強くみられます。言いかえれば、それだけ、男性の方が腎障害にかかりやすい傾向にあるとも言えます。同様に、家族に腎症の人がいれば、遺伝的なものや、環境、食事などの習慣が似ているなどの理由で、腎症にかかりやすい傾向があるので、気をつけてください。
糖尿病の合併症は自覚症状のないまま進行するので、腎症の場合、症状のひとつであるむくみに気づくころには、すでに腎症は透析導入が視野に入るところまで進んでしまっています。